今回は、私のプチ趣味となっている先端技術に関する論文読みのお話。
学生の頃にお世話になった教授から、耳タコなほど
「最先端の研究分野に常にアンテナを張れ」
「たとえ、自分の専門分野に直接関係がなかろうと世界の最先端を知れ」
と言われてきました。
学術世界から離れてもう5年も経ってしまいましたが、
ブログやネット記事などでそういった情報を集める癖が未だに抜けないのです。
全く知らない世界が広がっていて、
読んでいても「さっぱりわからん」と呆れるものもあれば、
「はぁ!?そんなことあるの!?」と従来の常識を覆すような驚きもあり、
非常に面白いです。
どんな分野であれ、世界の最先端を行っている研究は、
私から見れば「おとぎの国の話」のように見えて、そこにロマンを感じます。
最近読んだ中で、一番「ワンダーランド」な研究だと思ったのは、
生理学・病理学的観点から見た「最強のウイルス」の話と
物理学・建築学的観点から見た「最強の建材」の話。
まず、「最強のウイルス」の話から。
ウイルスと聞けば、
つい最近まで猛威を振るっていたコロナウイルス(covid-19)や
毎年のように話題に出るインフルエンザウイルスなど、
人間に害なすろくなものではないというイメージが濃いと思います。
しかし、ヒトにとってのネガティブエフェクトとしてのウイルスではなく、
ヒトにとってのベネフィットとしてのウイルスがあったらどうだろう?
こんな発想から始まった研究があるそうなのです。
つまり、ウイルスを喰うウイルスのようなものがあれば、
ヒトは感染症から解放されるのでは?ということ。
一般に、ウイルスは、
他の生物の細胞を利用して自己を複製・増殖する構造体と定義されています。
原理的には、
ウイルスが自己複製・増殖を行うベースとしてヒトの細胞を選択した場合、
ヒトの体の中で増殖し、ヒトの細胞(特に白血球などの免疫系)が拒絶反応を
起こした結果として、「症状」として現れるということらしいです。
その原理を、
ヒトにとって害となるウイルスAをベースに増殖するウイルスBがあったとして、
ウイルスBが増殖する過程でウイルスAをヒトの体から駆逐し、
なおかつヒトの免疫系にウイルスBが拒絶されなかったとしたら、
「ウイルスを喰うウイルス」「ヒトを救うウイルス」が作れるのでは?
という論理で応用した研究なのだとか。
極論を言えば、
その「ウイルスを喰うウイルス」がヒトに害なすあらゆるウイルスを喰うならば、
コロナ、インフルエンザ、HIVなどのウイルス症状が治療できるかもしれないし、
ウイルスに限定せずに、細菌類も捕食対象とするならば、
細菌性の感染症も治療できるかもしれない。
事実、ヒトの免疫系に拒絶されないウイルス自体は、
意外にも身近に存在しており、ヘルペスウイルスなどがその代表例です。
ヘルペスウイルスは、基本的にはヒトの体と共生する道を行っており、
疲労や極度のストレスに晒されて免疫系のバランスが崩れた場合にしか
症状が現れませんし、その症状もせいぜい水脹れや口内炎程度。
もしかすると、ヘルペスウイルスをベースに
「最強のウイルス」が作れる可能性があるかもしれない。
それと匹敵するくらい夢溢れる話が「最強の建材」の研究。
鉄橋や電波塔などの大きな構造物を作る上で
常に現場が頭を悩ませているのが、建築強度。
もし、計算違いで建ててみたらすぐに崩壊したら?
もし、地震や風害などの想定以上の外的な力が働いたら?
こんなことを考えると、「絶対に安全な建築物」は存在しないそうです。
しかし、文明が発展していくにつれて、
人間が作る構造物も高度かつ巨大なものになってきた歴史があります。
直近で言われているのは、「宇宙への軌道エレベーター」計画。
ロケットやスペースシャトルを打ち上げて宇宙に行くのではなく、
エレベータの要領で、ゴンドラを上げ下げするだけで宇宙へ行き来する計画。
もし、この計画を実行するならば、間違いなく「強度」が争点となる。
つみきを高く積み上げるほど、少しの振動で簡単に崩れてしまうように、
軌道エレベーターも構造上、脆い建造物となることは必然であるのだが、
それを覆す「最強の強度を持つ建材」を開発できないものか。
このような視点から、研究が進んでいるのは「蜘蛛の糸」。
実際の測定値などがどうなっているのかは、調べがつきませんでしたが、
蜘蛛の糸がロープくらいの太さに束ねたとしたら、理論上は絶対に切れないとか。
そんなロープが開発できたら、
吊り橋の要領で、軌道エレベーターをこのロープで支える構造物が作れるはず。
なんて夢のような話を日夜本気で研究している人々がいると思うと、
最先端技術の分野はやはりロマン溢れるワンダーランドだなぁと。
学生の頃、教授に言われた言葉から
私が常に目標としていたのは、「あったらいいなを形にする」こと。
(某製薬会社のキャッチフレーズみたいだけど...)
きっと、学問や技術の発展は、こんな感覚が原点なのだろうなと思い、
そういう意味で、教授は常に最先端を知れと私たちに教えたのだろうと
最近になって理解できるようになってきました。
学生の頃にもっと深く考えていれば、
もっと良い研究ができたんだろうけどなぁ。